~女性3所長たちの想いと生き様~
北村恵子様
主に重症心身障がい児が通う放課後等デイサービス事業所
NPO法人こぴあクラブ創業者・理事・こぴあクラブ江東区冬木事業所所長
http://www.kopiaclub.com/
― 創業日とその経緯を教えて下さい。
1995年4月1日に事業を開始し、10月1日に江東区から認可されました。重度障がいを持つ息子が3歳になった年に、丁度、障がい児保育が制度化され、息子のような重度の子どもが保育園に入れることになり、私も入退院の付き添いから離れる時間が確保出来ました。その際、どうせ仕事をするなら、全力で取り組める仕事を、と考えました。この点、障がい児保育の制度化で、社会に受け皿がある事の有難さを痛感したし、障がい児を持つ家庭を応援したい。そして、保育園卒後の施設は、息子もいずれは必要になるので、十分な受け皿がないなら自分が作ろうと思いました。
―今以上に、沢山の困難があったと推測しますが、当時から、「障がい」が重度のお子様を中心に預かっていたのですよね?
軽度の障がいならば、学童クラブ等の預け先があったので、最初から重度の子どもの希望がありました。私自身が、重度障がい児の母親だった事もあってか、保護者から親近感を感じてもらえたのではと思います。失敗や責任の重さ、大変さは深く考えず、「必要だからやる、やりながら学ぶ」姿勢で、突き進んできました。家族や現場職員の協力を得て、何とか乗り越えて来ました。
―その職員さんですが、障害児者福祉は離職率が高く、人材確保が一層重要だと理解しています。この点、「こぴあ」職員は定着率が高く、また、他の施設運営者の耳にも、高い評価が伝わるほどです。実際、私が「こぴあ」で数ヶ月ボランティア経験をさせていただく中で、一番驚き感激したのは職員さんの明るく元気な姿。皆さん、心底楽しんでいらっしゃる。何が要因でしょう?
「こぴあ」には20年以上勤めて下さる職員は沢山いますし、10年以上のアルバイトの方もいます。職員は、賃金だけが目的なら他の事業所に行くのかも知れませんが、子ども達の笑顔を見る為に、「こぴあ」で働いてくれるようです。全く異業種から入って、仕事の楽しさを知り、のめり込む方も多いです。昨年、実施した第三者機関による満足度アンケートでは、大企業以上の高い満足度に、調査機関の方々が驚かれていました。それも保護者の皆様との信頼関係のお陰だと思います。保護者が「お金を払ってお任せ」ではなく、子どもへの深い愛を伝えながら、「こぴあ」を良い施設に育てて下さっています。疑心暗鬼から生まれる保護者の苦情はほとんど無く、職員の小さなミスも理解し、むしろ励ましてくれます。良好な信頼関係の下で育つ子ども達は、大人を信頼し、安心して明るい笑顔を見せてくれる。その笑顔を見たくて職員は挑戦し続けられ、頑張れるのです。そして、それがまた保護者の皆様との信頼関係を強くする好循環が生まれてます。
― そんな「こぴあ」のありのままの姿を映画化した「世界一すてきな僕たち私たち」が2014年に製作されました。私も2度鑑賞しましたが、本当に、「こぴあ」の魅力が満載です。映画製作の経緯や裏話等、御聞かせ下さい。
私が、上村(宮崎)信恵監督作品「あした天気になる?」(※発達障害をテーマとしたドキュメンタリー映画)を観て、そのアンケート用紙にコメントした事がきっかけです。そのコメントを見た監督が、「こぴあ」のホームページや事業所見学で見た子ども達の活き活きした表情に感激し、撮影の申し出をして下さいました。その後、実名や顔を出しても良いか、保護者に尋ねた処、「発達障害等、解り難い障害を含めて、ありのままの姿を広く社会に知って頂きたい」とほとんどの保護者が賛成。むしろ取材を待ち望み積極的に協力して下さるほどでした!撮影当時、3名の新人職員を受け入れた直後だったので、スタッフ側は支援内容に自信はなく、初めは消極的でした。後になって見ると反省点が多くあります。しかし、子ども達への理解を深めてもらう狙いを説明し、スタッフに理解を求めました。
― 沢山の福祉関係の方々がアンケート用紙に記入していたはずなのに、驚きました!さて、事業を運営する上で、大事にしている事は何でしょう?
地域に必要とされる施設でいたいと思います。子ども達は勿論、兄弟姉妹、家族、皆の幸せに役立てる、障害があってもなくても、当たり前に、日々の生活を楽しんで頂きたい。これは職員も同様で、福祉だからといって重労働・低賃金を我慢するのではなく、当たり前に、満足いく環境を楽しんで頂ける施設でありたい。そして、応援して下さる地域の方々の想いに応えていきたいです。
― そんな子ども達や保護者への希望があれば、御聞かせ下さい。
必ずしも良い面だけではありませんが、小学校一年生から高校三年生までの期間は、支援が充実した「ゴールデンエイジ」と呼ばれます。「こぴあ」が関わるこの12年間に、少しでも多く「生きているって楽しいな」「人間って温かいな」「明日も楽しい一日に違いない」と感じ、充実して心の土台を作って卒業して欲しいな、と思います。また、保護者の方々にも、この期間に、沢山の楽しい子育ての思い出を作って頂きたい。「うふふ」と笑いながら布団に入る子どもの姿を見るのは親の幸せ、そんな時を増やして頂きたい。それが今後の人生の基盤になる、と思います。
― 本当にその通りですよね。さて、認定NPOを取得する準備を進めているそうですが、その意図と現状を教えて下さい。
放課後等デイサービスは長年の署名運動等が実ってようやく認められた新しい事業で、国の想定以上にニーズがあり。「税金の使い過ぎだ」と叩かれるようになってしまいました。国は何とか支出を減らそうと、制度が度々見直され、私達は振り回されています。そこで、安定的な運営をする為に、支援を頂きやすい環境を整えています。ホームページ改訂も準備しています。
― 区民の皆様にメッセージや御希望があれば教えて下さい。
時々、私達が活動している様子を観て、見ず知らずの方々から「いつも素敵な表情を拝見して、励まされています」とか、「楽しそうな子ども達の笑顔は本当に素敵ですね」等と、お声がけや、時には寄付を頂く事さえあります。保護者も含め私達は、周囲の方々にご迷惑をかけないか気配りしながら過ごす事が多いのが現実です。ですから、私達の笑顔で、地域の方々を元気づけられたかと思うと、安心出来るし、励みにもなります。きっと、同じように感じても、声に出し難い方もいらっしゃると思うのですが、是非、声に出して伝えて頂きたい。私達は、そんな声を聴くと、とっても嬉しく、元気が出ます。
― なるほど!3年後に30周年を迎えますが、何か希望などはありますか?
20周年では、丁度映画が完成した後だったので、やはり当時完成したばかりの豊洲シビックセンターに沢山の方々にお越し頂き、大々的に、上映会と式典を行いました。30周年では、まだまだ私一人の夢でしかありませんが、新澤としひこさんのコンサート開催を希望しています。新澤としひこさんは「はらぺこあおむし」「世界中のこどもたちが」等、で有名な方ですが、こぴあの子ども達が大好きなので、コロナ禍が明けていれば、一緒にステージの上で各自自由に歌って踊って楽しむ姿を観たいと思っています。新澤としひこさんのお父様は神愛保育園園長先生だった新澤誠治さんです。1995年4月、新澤誠治先生から多大な御支援を頂いたお陰で、「こぴあ」が創業出来ました。「こぴあ」創業以来、沢山の地域の方々に支えられて今日を迎えた事を、次世代の方々にも伝えたい気持ちがあります。このコンサート経費、先生のご都合、関係者の考え方等、一切白紙ですが、私の夢です。
― 素晴らしい夢ですね!最後に今のお気持ちを教えて下さい。
私は組織を引っ張る器ではないけれど、応援して下さる方々が沢山いて、その気持ちに応えるために頑張れました。沢山の応援して下さる方々への感謝の気持ちで一杯です。本当に一人一人の顔が思い浮かびます。その方々にお応えし将来を築いていくためにも、運営力を高めて行く即戦人材育成や、待遇改善含めた“働き甲斐”をどのように創っていくのかが課題です。その成長に向けた行動も所長として大事な役割だと感じています。
運営パートナーでありグループ施設長の丸目所長は、福祉界における制度問題や合理的配慮を理解しつつ、環境・自立・共助といった労働環境改善にも目を向け、スタッフや親子みなさんを含む“こぴあならではの働き甲斐や成長”を共有したいと考えてくれています。彼女含むそんな想いのある女性たちにも見守って頂いております。施設は生き物、だと思っています。決して建物や規則ではなく、関わってくれた人達によって施設の人格が創られる。お金も人脈もないところから、熱意だけで始めた「こぴあ」ですが、恐らく、私が頼りなく、暴走しかねないから、沢山の人達が支えてくれたのでしょう。でも、その方々の好意によって、今の「こぴあ」らしさであり、人格が創られました。今後も、また、沢山の人達に関わって頂き、「こぴあ」らしさを作って頂けたら嬉しいです。
左から三浦恵様・第2こぴあクラブ所長、北村恵子様、丸目香耶様・第3こぴあクラブ所長
・こぴあクラブ冬木 〒135-0041東京都江東区冬木6-20 TEL/FAX:03-3630-1363 Mail:kopia-fuyuki@kopiaclub.com
・第2こぴあクラブ(亀戸)〒136-0071東京都江東区亀戸6-48-5 TEL: 03-5969-8660 Mail:kopikame@sea.plala.or.jp
・第3こぴあクラブ(枝川)〒135-0051東京都江東区枝川1-11-16 TEL : 03-6659-7432 Mail:kopia-dagawa@kopiaclub.Tokyo
*インタビューを終えて:
約30年間、道なき道を切り拓いてきた「こぴあ」の歴史と文化は圧巻です。難局に向き合う度に、素晴らしい御縁に恵まれ乗り越えてきました。映画製作もその一つ。これらは、決して偶然ではない事が、今回のインタビューで確信出来ました。「こぴあ」には子ども達を中心に、純粋な愛がぎゅっと詰まっています。その愛は純度が高いので、「こぴあ」を知れば、喜んで応援したくなるのでしょう。私もそんな「こぴあ」ファンの一人です。別の機会に、北村先生と共に20年以上、第一線で奮闘してきた三浦恵様(第二こぴあクラブ所長)・丸目香耶様(第三こぴあクラブ所長)が口をそろえて仰いました。「毎日、忙しくて目が回りそう。だけど、子ども達の笑顔を見たら、疲れなんて吹っ飛ぶの!」。3人の愛溢れる女性が率いる「こぴあ」は、地域の宝です! (文責:柳智啓 2022年8月30日)
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